Angle! Baby! Cupid!

とあるジャニオタののんびり随想録

MORSE-モールス- 感想

本題に入る前に、これから観に行く人にいくつかオススメしておきたいことがあります。



まずあらかじめ原作に触れておくということ。
この舞台は映画よりストーリーが比較的分かりやすくなっている、と私は思う。
しかし、暗喩が多く使われていて、理解を深めたい人や舞台初心者には?なシーンもあるだろう。
(映画を観たのに分からなかったシーンがあった奴がここにいます…)

私が観たのは2008年に公開された「ぼくのエリ 200歳の彼女」。

そして「ぼくのエリ」を2010年にハリウッドでリメイクしたのが「モールス」。

モールス BD [Blu-ray]

モールス BD [Blu-ray]


どちらの作品ももう旧作となっているのでレンタルビデオ店で安く借りることができる。
ちなみに前者がPG12、後者がR15なので、グロいシーンが苦手な方は相当の覚悟が必要。
映画を観ても?な人は映画の感想が書かれているサイトを巡ってみてもいいだろう。
違う解釈に触れることができるので舞台をもっと楽しめるはず。


そして幕間に糖分を摂取すること。
このお話はただのヴァンパイアと恋をするだけではない。
複雑かつ暗い場面が続き、「あっこの台詞は〇〇なことの暗喩かな…?」等と考えていたら幕間にはクッタクタに疲れていた私。
ここでチョコレートやら何やらを持っておけば二幕ももっと集中して観られたかも…!!
ということで軽めのお菓子を持っていくことをオススメする。
東京グローブ座ならロビーに軽食が売っているのでそれを利用してもいいだろう。
二幕は更に急展開が続くので幕間で覚悟を決めよう。


さて前説が長くなりましたが、ここから本題の感想に入っていきます。
ネタバレあるので嫌な人はUターンしましょう。










まずは最初のシーン。
ネタバレで読んでしまっていたので驚かなかったが、パンイチで透明の箱の中にいるってどういうこと!?
おそらく「ぼくのエリ」の冒頭に似ているシーンがあったからそれをモチーフにしているのだろう。
スタートからなかなか衝撃的なシーンであった。


前説でも軽く触れた通り、このお話は暗く重い。
時代は1980年代。
雪に覆われ閉鎖的なストックホルム郊外。
同性愛者の父、アルコール中毒の母、そして学校でいじめられている息子のオスカー。
ヴァンパイアのエリ、エリのため殺人を続けるホーカン(実は原作ではロリコンという設定が…)、とざっと人物紹介をするだけでもお腹いっぱいになりそう。
特にオスカーがいじめられているシーンは目をそらしたくなるものもある。
アイスホッケーのスティックで殴られたり、砂を食べさせたり。
ネタバレ無しで行ったら、きっと目を覆っていただろう。


また、忠実に映画を再現しているのにびっくり。
キャスト全員が体を張っている。
例えばエリのためホーカンが血を集めるシーン。
人が宙に吊るされていた。
えっ!?グローブ座ってこんなこともできるの!?という驚き。*1
エリの動きも人間を越えていた。
ジャングルジムで縦横無尽に動き回ったり、人に飛び付いて血を吸ったり。
二幕冒頭、警官が尋問している場面ではエリが病院の壁をトカゲのようによじ登る。
全く違和感がない。
パンフレットで水上京香さんが言っていた通り、エリが乗り移っていた。


そして何と言ってもラストシーン。
オスカーがプールで1分ほど沈められている。
水槽が曇っていたあたりお湯が入れられているのだろうけど、あれを毎公演やっているの…?
この瞬間、劇場全体が固唾を呑んだ。
時が止まったように静かになった。
そして現れるエリ。
いじめっ子達を無惨な形で倒していく。
水中からオスカーを救い出し二人は微笑む。
バラバラになった人体が散らばっている中で。
そんな光景なのに私は美しいと思った。


私が知っているジャニーズWEST小瀧望はそこにはいなかった。
小瀧氏といえば甘えん坊の弟キャラだったが、この舞台にいたのは座長・小瀧望だった。
あの堂々とした佇まい。
表情の移り変わり。
彼の演技があそこまで上達しているとは思わなかった。
だけど、カーテンコールでお客さんみんなに手を振った後、肩を回しながら帰っていった時はいつもの彼だった。
その時、私の中にあった緊張がほどけていった。
いつもの笑顔、それを見ることができて良かった。





お宅の望くん、立派でしたよ。










追記
私が観ていて一番辛かったシーン、売店のおじさんに「もう来ないでくれるかな?」と言われるところが前回(11月17日)と変化していた。
何故このシーンが一番辛かったというと、ここで完全にオスカーが一人に、世界でたった一人になってしまうからだ。
その時の目に光のないオスカーが忘れられない。
前回はおじさんはそう呟くと、冷ややかな目でのぞむぅオスカーを見ていた。はず。
だけど今回はお菓子をあげようと、いつも通り投げようとしていた。
悲しそうな目をして。
小さな小さな変化だけど、それだけで物語の解釈が大きく変わることを実感した。







*1:この劇場にはIf or…でしか行ったことがなかった